市川雷蔵が出演した作品は、ワンカットのみのゲスト出演を含めて159本。邦画各社が監督・スタッフ・キャストと専属契約し、毎週のように映画が製作されていた中で、大映のドル箱スターであった雷蔵は、気鋭の新進作家や大ベテランと組むケースが多く、それによって幅広い役柄を得て、多岐に渡るジャンルの名作に出演した。今回の映画祭では、無限の広がりを見せる雷蔵の魅力を引き出した“映画監督”に注目して、新たな雷蔵映画の魅力に迫る。
*ことわりない場合、シネスコ作品です。

溝口健二監督 世界でもっとも激しく、美しい映画

1

新・平家物語 (1955年/カラー/107分/スタンダード)デジタル・リマスター版

原作:吉川英治 脚本:依田義賢、成沢昌茂、辻久一 撮影:宮川一夫
共演:久我美子、林成年、木暮実千代

旧来の貴族社会に対抗し、武家社会の台頭、僧侶との勢力争いといった平安末期の動乱の世を生き抜く反逆児、青年・平清盛の野心と苦悩と情熱をスケール大きく演じ、俳優・市川雷蔵としての力量、存在を世に知らしめた記念碑的作品。

伊藤大輔監督 格式と娯楽を融合させた時代劇の父

2

弁天小僧 (1958年/カラー/86分)

脚本:八尋不二 撮影:宮川一夫 美術:西岡善信 共演:勝新太郎、青山京子、阿井美千子

巨匠伊藤大輔監督との初顔合わせ。歌舞伎狂言の『白浪五人男』より材を取り、宿命に殉じる弁天小僧菊之助を描く。伊藤監督の小気味良い演出のもと、雷蔵は、小姓姿に艶やかなる女装と、変幻自在の弁天小僧を活き活きと演じる。

3

ジャン・有馬の襲撃 (1959年/モノクロ/114分)

脚本:伊藤大輔 美術:西岡善信 共演:叶順子、根上淳

1609年、南方貿易の拠点・イベリア王国で日本人虐殺事件が発生。敵を取るため、長崎に入港したイベリア船にキリシタン大名ジャン・有馬が挑む。海洋スペクタル時代劇巨編!

4

切られ与三郎 (1960年/カラー/95分)ニュープリント上映

脚本:伊藤大輔 撮影:宮川一夫 美術:西岡善信
共演:淡路恵子、冨士眞奈美、中村玉緒

「弁天小僧」に続く歌舞伎もの。数奇な運命に弄ばれる愛憎流転の与三郎とお富の恋物語を詩情豊かに描き出す。撮影の宮川、美術の西岡らの功績と相俟って、計算し尽くされた場面構成は、伊藤監督による時代劇の頂点の一つ。

森一生監督 雷蔵と最多コンビを組んだ当代随一のテクニシャン

5

朱雀門 (1957年/カラー/100分/スタンダード)ニュープリント上映

原作:川口松太郎 脚本:八尋不二 撮影:宮川一夫 美術:西岡善信
共演:若尾文子、山本富士子

語るは恋、抱くは夢。多感の貴公子の胸焦がすのは、瞳優しき和の宮か、炎の肌の夕秀か。風雲急を告げる幕末。十四代将軍家茂の夫人として降嫁された和の宮の物語を、華麗に哀しく描く王朝絵巻。篤姫も登場。

6

人肌孔雀 (1959年/カラー/99分)ニュープリント上映

脚本:松村正温 美術:内藤昭 共演:山本富士子、梅若正二

男装・芸者と変装を駆使して復讐を狙う美貌の乙女。その企みを知り快剣振るって女を助ける若剣士。七変化のコスプレで山本富士子の魅力が溢れ出る。脇では雷蔵が飄々と楽しげに山本を引き立てる、明朗娯楽時代劇。

7

人肌牡丹 (1958年/カラー/84分)

脚本:松村正温 美術:内藤昭 共演:山本富士子、梅若正二

人肌孔雀の姉妹編として製作。山本富士子のコスプレは数を増し、剣戟に唄に踊りにと、加賀百万石を舞台に大活躍。雷蔵は謎の遊び人、正体は幕府目付け役という二面を持った役を演じる。

8

若き日の信長 (1959年/モノクロ/97分)ニュープリント上映

原作:大佛次郎 脚本:八尋不二 美術:内藤昭
共演:金田一敦子、青山京子、市川染五郎(現 松本幸四郎)

「うつけ者」と呼ばれた奔放・豪快な若き信長の桶狭間の戦いに至るまでの活躍を、激しく、そして颯爽と演じる雷蔵。市川海老蔵が初演を演じた大佛次郎原作の歌舞伎演目を映画化。

9

薄桜記 (1959年/カラー/110分)

原作:五味康祐 脚本:伊藤大輔 共演:勝新太郎、真城千都世

雷蔵作品の中でも傑作に数えられる時代劇映画の到達点。赤穂浪士の討ち入りを背景に明暗を分かつ二人の剣豪の友情と愛情と悲憤を、森の演出、伊藤の脚本、そして本多省三のカメラが相俟って昇華された華美なる世界を創出している。

10

濡れ髪喧嘩旅 (1960年/カラー/99分)ニュープリント上映

脚本:八尋不二 共演:川崎敬三、山田五十鈴

濡れ髪シリーズ4作目。金に細かい旅鴉と、サラリーマン根性丸出しの若侍。ひょんなことから道中共にする二人を襲う悪代官の罠。現代調の明るい笑いと仄かな哀愁のにじむ娯楽時代劇。

11

忠直卿行状記 (1960年/モノクロ/94分)

原作:菊池寛 脚本:八尋不二 美術:西岡善信 共演:中村鴈治郎、水谷良重(現 八重子)

越前六十七万石の藩主で、大坂夏の陣で武勲を成した家康の孫松平忠直。彼が家臣への不信を持ち、暴君へと変貌していく様を苦悩と狂気を交えて演じる雷蔵の凄み。前作の「大菩薩峠」と併せ、大きく役幅を広げた。

12

おけさ唄えば (1961年/カラー/83分)ニュープリント上映

脚本:笠原良三 共演:橋幸夫、水谷良重(現 八重子)

映画界のスター市川雷蔵と歌謡界のスター橋幸夫、よく似た二人の夢の初共演。橋の代表曲を映画化した歌謡ムービーで、お色気たっぷりの水谷良重(現 八重子)を加えた三人の珍道中。雷蔵は、悪党志望だが根の優しさで人助けしてしまうという役柄。

13

大菩薩峠 完結篇 (1961年/カラー/98分)

原作:中里介山 脚本:衣笠貞之助 美術:西岡善信 共演:本郷功次郎、中村玉緒、小林勝彦

監督を森一生にバトンタッチし製作されたシリーズ完結篇。狂気の度を深める龍之助、そんな難役をひたすら悲痛にそして妖しく演じる雷蔵。心眼冴える龍之助の魔剣と兵馬の正剣の対決の行方は?

14

新源氏物語 (1961年/カラー/102分)

原作:川口松太郎 脚本:八尋不二 美術:西岡善信 共演:寿美花代、中村玉緒、若尾文子、市川寿海

雷蔵がその美貌にあまりに相応しい光源氏を演じる豪華絢爛の王朝絵巻。次々と女たちを翻弄していく光源氏の魅惑の美しさ! 雷蔵の強い希望で宝塚トップスター・寿美花代が出演。雷蔵の養父である市川寿海が父役で共演。

15

江戸へ百七十里 (1962年/カラー/83分)ニュープリント上映

原作:山手樹一郎 脚本:笠原良三 美術:西岡善信 共演:瑳峨三智子、五月みどり、中村鴈治郎

雷蔵のニセ若君と瑳峨三智子のジャジャ馬姫の絶妙コンビが陰謀破りの痛快道中。笑いと剣が飛び交う山手樹一郎の原作に、腰元役の五月みどりの唄も加わる明朗時代劇。

16

陽気な殿様 (1962年/カラー/91分)

原作:五味康祐 脚本:笠原良三 共演:坪内ミキ子、高田美和、宇津井健

家督相続の話が持ちあがる最中、屋敷を抜け出し江戸から姫路への旅路で巻きおこす剣難、女難の旅をコミカルに描いた“若様モノ”の一篇。坪内逍遥の孫娘・坪内ミキ子が華々しくデビュー。

17

てんやわんや次郎長道中 (1963年/カラー/74分)ニュープリント上映

脚本:八尋不二 美術:西岡善信 共演:坪内ミキ子、ミヤコ蝶々、藤田まこと

ゴールドラッシュに湧く宿場町に現れた一人の旅鴉。実は変装した次郎長親分。黄金目当てに悪事を働く輩を相手に、同じく変装して集まった大政や石松ら、子分と共に大活劇。雷蔵中期以降では珍しい明朗もの。

18

昨日消えた男 (1964年/カラー/83分)ニュープリント上映

脚本:小国英雄 共演:藤村志保、高田美和、宇津井健

謎解きマニアの徳川吉宗が同心に姿を変え、城下で巻き起こる幽霊船騒動と連続殺人の捜査にあたることに。笑いとミステリー、最後のひねりと雷蔵映画の一つのお馴染みであった明朗時代劇のジャンルは、本作が最後。もっと見たかった。

19

博徒ざむらい (1964年/モノクロ/93分)

原作:久保栄 脚本:高岩肇、武田敦 共演:本郷功次郎、坪内ミキ子

時は幕末。甲斐の祐天と呼ばれるヤクザが、時代の荒波に飲まれ武士や盗賊へと身を変えての大活劇。大河ドラマ的広がりがあるヤクザ映画で、リアリティのある映像と雷蔵の鋭い芝居が魅力。

20

陸軍中野学校 雲一号指令 (1966年/モノクロ/81分)ニュープリント上映

脚本:長谷川公之 共演:加東大介、村松英子

陸軍中野学校の続編。前作でスパイ訓練を終えた椎名次郎を始めとする中野学校一期生が、神戸を舞台に初めて実践の諜報活動に挑む。冷徹な作風を引き継ぎ、クールなスパイ活劇が見もの。

21

ある殺し屋 (1967年/カラー/82分)

原作:藤原審爾 脚本:増村保造・石松愛弘 撮影:宮川一夫 共演:野川由美子、成田三樹夫、小林幸子

普段は飲み屋の主。ひとたび依頼がくれば、針一本で仕事をこなすプロの殺し屋。言葉少なに、淡々と殺し屋を演じる雷蔵版フィルム・ノワール。陰影の効いた宮川一夫のカメラも冴えるハードボイルド作品。

22

ある殺し屋の鍵 (1967年/カラー/80分)

原作:藤原審爾 脚本:小滝光郎 構成:増村保造 撮影:宮川一夫 共演:西村晃、佐藤友美

表向きは日本舞踊の師匠だが、殺しを請負えば凄腕を発揮! 前作から若干設定を変えつつ、スケールアップ。日本舞踊はもちろんヨットも走らせる雷蔵の珍しいアクション・シーンに注目。

田中徳三監督 文芸薫るスタンダード作を連打した名監督

23

お嬢吉三 (1959年/カラー/81分)

脚本:犬塚稔 美術:西岡善信 共演:島田竜三、北原義郎、林成年

「弁天小僧」に続き歌舞伎から材を取った絢爛時代劇。出獄したその足で、自分たちを入牢させた悪旗本へのお礼参りを済ませたお嬢・お坊・和尚の三人吉三は江戸を出奔。しかし三人の行くところ騒ぎは続き・・・。粋、痛快、艶と雷蔵の魅力満載。

24

濡れ髪三度笠 (1959年/カラー/98分)ニュープリント上映

脚本:八尋不二 美術:内藤昭 共演:本郷功次郎、淡路恵子、中村玉緒

濡れ髪シリーズ第2作。娯楽大作に相応しい明るい作風と完成度から、本作以降濡れ髪が本格的にシリーズ化。期待の新人田中監督のメガホンの下、これまたデビューしたばかりの本郷功次郎が、雷蔵とともに楽しそうに演じている。

25

浮かれ三度笠 (1959年/カラー/99分)ニュープリント上映

脚本:松村正温 美術:西岡善信
共演:本郷功次郎、中村玉緒、左幸子、かしまし娘(庄司歌江・花江・照江)

濡れ髪シリーズ第3作。政略結婚を嫌い家出した姫が道中に出会う一人の色男。そこに不穏な二組のグループが現れ・・・。二枚目雷蔵に惹かれる玉緒は、劇中で“ファニーフェイス”と評される愛らしさ。

26

大江山酒天童子 (1960年/カラー/114分)

原作:川口松太郎 脚本:八尋不二 美術:内藤昭 共演:長谷川一夫、山本富士子、勝新太郎

著名な大江山酒天童子伝説を材に、デビュー来着実なヒットを飛ばす田中監督が初めて挑む超大作。長谷川演じる酒天童子の退治に向かう源頼光に雷蔵。勝ら若手株で編成する四天王を率いて存在感を示す。

27

花くらべ狸道中 (1961年/カラー/80分)ニュープリント上映

脚本:八尋不二 美術:内藤昭 共演:若尾文子、小林勝彦、中田康子、勝新太郎

お正月映画といえば、タヌキ・ミュージカル。ということで、大映オールスターのお祭映画として製作、おなじみ弥次喜多道中の登場人物を狸に置き換え、唄と踊りで綴る華やかな作品。雷蔵の歌声もしっかり聞けます。

28

濡れ髪牡丹 (1961年/カラー/90分)ニュープリント上映

脚本:八尋不二 共演:京マチ子、小林勝彦

京マチ子の勇ましい大姐御に、飄々とした旅鴉の雷蔵が沸かせる濡れ髪シリーズ第5作。女大親分の婿選びに繰り出される難問を次々と切り抜ける千万変化の技の使い手は、どこかとぼけた流れ者。ヨーロッパ映画の香薫るお洒落なコメディ。

29

鯉名の銀平 (1961年/モノクロ/80分)

原作:長谷川伸 脚本:犬塚稔 共演:中村玉緒、成田純一郎

影を帯びた孤高の旅鴉が活躍する股旅ものを数多く描いた長谷川伸と雷蔵とのコンビ作には傑作が多く、本作もその一本。物語の前後半で表情仕草が変貌する雷蔵の幅広い魅力が詰めこまれている。

30

手討 (1963年/カラー/85分)

原作:岡本綺堂 脚本:八尋不二 美術:西岡善信 共演:藤由紀子、城健三朗(若山富三郎)

旗本青山播磨と腰元お菊の悲恋、岡本綺堂原作の戯曲『番町皿屋敷』を大胆に脚色。泰平の世に無用の長物と疎んじられた旗本と大名の対立を背景に、使命を成し遂げるため、愛する女を斬らねばならぬ男の哀切を鮮烈に描く。

31

眠狂四郎 殺法帖 (1963年/カラー/82分)

原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 美術:内藤昭 共演:城健三朗(若山富三郎)、中村玉緒

雷蔵の代名詞となった眠狂四郎シリーズの記念すべき第一作。狂四郎特有の陰影に満ちた孤独感は表現されていないが、剣戟としての魅力に富み、雷蔵の当り役としての萌芽はしっかりと見受けられる。

32

忍びの者 霧隠才蔵 (1964年/モノクロ/87分)ニュープリント上映

脚本:高岩肇 共演:磯村みどり、城健三朗(若山富三郎)、中村鴈治郎

忍びの者シリーズ第4作。前作までの石川五右衛門から、虚構の忍者・霧隠才蔵に役柄を変えた。裏街道を行く忍者の視点から、徳川幕府成立時の政治と陰謀をリアリスティックに描き出す。「続霧隠才蔵」とは前後編の関係。

33

赤い手裏剣 (1965年/カラー/87分)ニュープリント上映

原作:大藪春彦 脚本:高岩肇、野上竜雄 撮影:宮川一夫 美術:西岡善信 共演:小林千登勢、南原宏治

大藪春彦唯一の時代小説を映画化。三組のやくざが抗争する宿場に流れ着いた男の活劇を描くハードボイルド。西部劇から翻案した大藪の世界観を、オープンセットの広がり、宮川のキャメラと共に映像化。

34

大殺陣 雄呂血 (1966年/モノクロ/87分)ニュープリント上映

原案:寿々喜多呂九平 脚本:星川清司、中村努 美術:西岡善信 共演:八千草薫、藤村志保

壮絶な剣戟「雄呂血」(阪東妻三郎主演)を改案し、鬼気迫る雷蔵の魅力を浮き立たせた意欲作。大殺陣の副題に相応しく、ラストでの圧倒的な長尺のチャンバラシーンは見応え十分。

35

陸軍中野学校 竜三号指令 (1967年/モノクロ/88分)ニュープリント上映

脚本:長谷川公之 美術:内藤昭 共演:安田(大楠)道代、加東大介、松尾嘉代

「陸中」シリーズ第3作。舞台を上海・中国本土に大きく広げ、中野学校の精鋭が大活躍。変装や小道具を駆使した諜報合戦など、硬派なスパイ映画としての楽しみが十二分に詰まった作品で、田中監督の巧さが光る。

36

眠狂四郎 女地獄 (1968年/カラー/82分)

原作:柴田錬三郎 脚本:高岩肇 美術:内藤昭 共演:高田美和、水谷良重(現 八重子)、田村高廣

いよいよ影を帯びた狂四郎のニヒリズム、容赦なく繰り出される円月殺法、そして画面を賑わす妖艶な女刺客。シリーズのお手本のような本作の監督田中徳三は、これが盟友・雷蔵との最後の作品となった。

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37

桃太郎侍 (1957年/カラー/87分/スタンダード)ニュープリント上映

原作:山手樹一郎 脚本:八尋不二 共演:浦路洋子、木暮実千代

生まれは双子だが里子に出されていた桃太郎。立派な剣豪に育ったが、生家存亡の危機に、世継ぎの兄と入れ替わって悪に立ち向かう。定番、定石の娯楽時代劇の要素をこれでもかと詰め込んだ快作。

38

千羽鶴秘帖 (1959年/モノクロ/87分)

脚本:八尋不二 共演:鶴見丈二、左幸子、中村玉緒

父の仇の果たそうとする美剣士に鶴見、雷蔵は神出鬼没に現れて剣士を助ける謎の男を演じる。ラストでは大凧に乗って黄金のシャチホコを狙うなど、荒唐無稽な楽しさもあり全編見飽きさせない。

39

大菩薩峠 (1960年/カラー/106分)

原作:中里介山 脚本:衣笠貞之助 美術:内藤 昭 共演:本郷功次郎、中村玉緒、山本富士子

中里介山により創出された稀代のヒーロー机龍之助を描く。眠狂四郎シリーズの先駆けとも言えるそのヒーロー像は、雷蔵時代劇の中でも屈指の虚無さを醸し出す。時代劇の醍醐味を満載、大ヒットを記録してシリーズ化された。

40

大菩薩峠 竜神の巻 (1960年/カラー/90分)

原作:中里介山 脚本:衣笠貞之助 美術:内藤 昭 共演:本郷功次郎、中村玉緒、山本富士子

第一作の大ヒットを受けお正月映画として公開された続編。前作で新選組に所属した龍之助だが、本作では天誅組に加わる。両眼を失いますます凄みと殺気を漂わす音無しの構え!

41

婦系図 (1962年/カラー/99分)ニュープリント上映

原作:泉鏡花 脚本:依田義賢 美術:内藤昭 共演:万里昌代、船越英二

「歌行燈」に続く泉鏡花の有名原作の映画化。明治の下町を舞台に、恋情と恩師への義理の狭間で苦悩する青年を演じる雷蔵。「切れるだの別れるだの、そんなことは芸者に言うものよ」と身分の違いによって引き裂かれる芸者の哀しみが深い。

42

斬る (1962年/カラー/71分)

原作:柴田錬三郎 脚本:新藤兼人 共演:藤村志保、渚まゆみ、万里昌代

関わった三人の女の死と、出生の秘密が陰を落とす天才剣士の数奇なる運命を、鬼才三隅研次が壮烈なる演出で描いた傑作。虚無的な美剣士を巧演する雷蔵と、日本刀の美しさが深く印象に残る、雷蔵時代劇の頂点の一つ。

43

新選組始末記 (1963年/カラー/93分)

原作:子母沢寛 脚本:星川清司 共演:城健三朗(若山富三郎)、天知茂、藤村志保

雷蔵が出演100本記念映画として自ら選んだ役は、己の剣のみによって動乱の世を生き抜こうとする新選組の一無名隊士、山崎蒸であった。星川が初めて書いた時代劇脚本で、後の眠狂四郎シリーズへと繋がっていく。

44

眠狂四郎 勝負 (1964年/カラー/83分)

原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 共演:藤村志保、高田美和、加藤嘉

シリーズ第2作。雷蔵の代名詞となった“眠狂四郎”の方向性を決定付けた傑作。幕府の権力争いに巻き込まれた狂四郎を襲う剣客たち、将軍の驕慢なる娘との対決。全篇に見せ場を散りばめ、さりげなく織り込まれる江戸情緒の描写が作品に幅を持たせる。

45

剣 (1964年/モノクロ/95分)

原作:三島由紀夫 脚本:舟橋和郎 美術:内藤昭 共演:藤由紀子、川津祐介

三島由紀夫の短編小説を雷蔵自ら映画化を企画。生涯の全てを剣一筋に賭ける青年・国分次郎を唯一無二の存在感で演じ、究極まで“今”を生きるその生き様と死を選ぶほどの純粋さが、畏敬の念すら思わせる。三隅の格調高い演出光る傑作現代劇。

46

無宿者 (1964年/カラー/89分)

脚本:星川清司 美術:内藤昭 共演:滝瑛子、坪内ミキ子、藤巻潤

父の仇を求めて旅する一本松と消息不明の父を探す侍。とある寒村で二人は出会い、そこを根城に悪の限りを尽くすボスに戦いを挑む。乾いた空気感や意表を突く展開などヤクザ映画の枠を超える面白さ。

47

眠狂四郎 炎情剣 (1965年/カラー/83分)

原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 共演:中村玉緒、西村晃、姿美千子

シリーズ第5作。狂四郎は未亡人の仇討ちを助けたことから、海賊の残した財宝を巡る藤堂藩・商人・海賊の三つ巴の陰謀に巻き込まれる。狂四郎に迫る剣の林に、冷たく冴える円月殺法。全編見所に富む娯楽作。

48

剣鬼 (1965年/カラー/83分)

原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 共演:姿美千子、佐藤慶

不幸な出生を持ちながら、花造りの名人で健脚、そして人斬りの名手という個性あふれるヒーロー、斑平の数奇な運命を描く。主人公が乗り移ったかのような雷蔵の、ラストのお花畑の殺陣シーンの物悲しさ!

49

眠狂四郎 無頼剣 (1966年/カラー・/79分)

原作:柴田錬三郎 脚本:伊藤大輔 共演:天知茂、藤村志保

シリーズ第8作。老中水野忠邦への恨みから、江戸を炎の海にと企む一味と行動を共にする謎の浪人・愛染。彼らの企みを阻もうとする狂四郎。立ち向かう愛染の剣は不敵にも、狂四郎と同じ円月殺法。同時に回る剣と剣、その死闘の先には?

池広一夫監督 円月殺法を生み出したケレン味の映像体験

50

沓掛時次郎 (1961年/カラー/87分)

原作:長谷川伸 脚本:宇野正男・松村正温 撮影:宮川一夫
共演:新珠三千代、杉村春子、志村喬、稲葉義男

渡世の義理で自ら斬った男から、妻と子供を託されて、進むもそこは艱難辛苦の道。明朗股旅ものが多かった雷蔵が長谷川伸原作の本格股旅ものに挑むに当り、自ら池広監督を推挙。撮影の宮川も加わり期待に応えた。

51

かげろう侍 (1961年/カラー/89分)ニュープリント上映

原作:伊藤大輔 脚本:松村正温 共演:中村玉緒

箱根山中の温泉宿で不可解な連続殺人が発生。居合わせた喜多弥十郎は、潜り込んできた探偵マニアの許婚に振り回されながら、事件の真相を追うことに。明朗時代劇にヒッチコックばりのサスペンスを加えた意欲作。

52

花の兄弟 (1961年/カラー/86分)ニュープリント上映

脚本:笠原良三 共演:橋幸夫、姿美千子、水谷良重(現 八重子)

「おけさ唄えば」に続き、レコード界の雷蔵と呼ばれた橋幸夫との共演で、兄弟役を演じている。父の仇を討つべく旅を続ける侍が、道中、やくざ稼業の弟と出会い、自らもやくざ修行をすることに・・・。

53

中山七里 (1962年/モノクロ/87分)ニュープリント上映

原作:長谷川伸 脚本:宇野正男、松村正温 主題歌:橋幸夫 共演:中村玉緒

人を殺めて旅を続ける政吉は、死別した恋人と瓜二つの女と出会う。女には男がいたが、男の借金の形に連れて行かれてしまい、政吉は単身救出に立ち向かう。長谷川伸の描くアウトローを雷蔵は体現。

54

影を斬る (1963年/カラー/82分)ニュープリント上映

脚本:小国英雄 共演:瑳峨三智子、坪内ミキ子

タイトルの印象とは全く毛色の違う明朗もの。遊び人に扮する雷蔵が、新婚早々新妻に薙刀で敗れ、その借りを返すべく修行のため上京。そこに妻と瓜二つの女性が現れ…。ラブコメ要素満載、洒落た展開はまるで少女漫画のよう。

55

眠狂四郎 女妖剣 (1964年/カラー/81分)

原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 共演:藤村志保、城健三朗(若山富三郎)、久保菜穂子

幕閣を抱きこみ私腹を肥やす怪商が送り込む刺客、淫欲と阿片に溺れる将軍の娘・菊姫による妖艶なる罠。狂四郎の出生の秘密を絡め、活劇的要素やエロティシズムを全篇に盛り込む。刀の残像を残すストロボ撮影による円月殺法が初登場。

56

忍びの者 続霧隠才蔵 (1964年/モノクロ/92分)ニュープリント上映

脚本:高岩肇 美術:西岡善信 共演:藤由紀子、藤村志保、城健三朗(若山富三郎)

前作「忍びの者 霧隠才蔵」の続編。大阪城から逃れた才蔵と真田幸村は、家康への復讐を誓い銃の製造法を探るため種子島へと忍び込む・・・。ケレン味の池広の面目躍如、矢継ぎ早のアクションが冴える一作。

57

若親分 (1965年/カラー/86分)

脚本:高岩肇、浅井昭三郎 共演:朝丘雪路、藤村志保、三波春夫

ヤクザの親分の息子で海軍士官の南条武は、闇討ちされた親の仇を取るべく二代目を襲名する。自らが憧れた海軍士官出身のヤクザという雷蔵ならではの奥深いキャラクターと、折からのヤクザ映画ブームに乗ってシリーズ化。士官制服姿の雷蔵も見所。

58

若親分 出獄 (1965年/カラー/87分)

脚本:浅井昭三郎、篠原吉之助 共演:朝丘雪路、坪内ミキ子

若親分の続編。前作で収監され6年ぶりに出獄、新興してきたやくざとの戦いに挑む。海軍とヤクザが裏で手を結ぶという本シリーズならではの展開で、平凡なヤクザ映画とは一線を画す。

59

眠狂四郎無頼控 魔性の肌 (1967年/カラー/88分)

原作:柴田錬三郎 脚本:高岩肇 共演:鰐淵晴子、成田三樹夫

出生の秘密に関るエピソードが印象深いシリーズ9作目。エロティシズムが売りの一つである眠シリーズだが、池広監督は本作でそれを極めるべく、次から次へと妖艶な刺客を送り込む。狂四郎には珍しいロードムービー。

60

ひとり狼 (1968年/カラー/84分)

原作:村上元三 脚本:直居欽哉 共演:小川真由美、長門勇

晩秋、木曽福島の宿外れ、助けた子供の母親は、昔一緒に駆け落ちに失敗した初恋の女だった。一匹狼伊三蔵に、襲いかかる過去の因縁。とにかく格好良い雷蔵が腕と気風で暴れまくる股旅映画の最高傑作。

61

眠狂四郎 悪女狩り (1969年/カラー/81分)

原作:柴田錬三郎 脚本:高岩肇、宮川一郎 共演:藤村志保、朝丘雪路、松尾嘉代

雷蔵最後の狂四郎。有終の美を飾るシリーズ12作目。病気療養を挟んでの撮影であるが、その佇まいに衰えは一切感じさせない。女の魔窟・大奥を舞台に、ニセ狂四郎を登場させるなどの趣向も凝っている。

市川崑監督 映像の魔術師にして、物語の名巧者

62

炎上 (1958年/モノクロ/99分)

原作:三島由紀夫『金閣寺』 脚本:和田夏十、長谷部慶治 撮影:宮川一夫 美術:西岡善信
共演:仲代達矢、中村鴈治郎、浦路洋子、中村玉緒、新珠三千代

雷蔵が初の現代劇として名匠市川崑、撮影宮川一夫とのコンビで挑んだ意欲作。信頼すべき周囲の人々に失望した青年。彼にとって唯一残された崇高なる存在である驟閣寺を守るため、自らの手で火を放つ。本作で数々の主演男優賞に輝く。

63

ぼんち (1960年/カラー/105分)

原作:山崎豊子 脚本:市川崑、和田夏十 撮影:宮川一夫
共演:若尾文子、中村玉緒、京マチ子、草笛光子、越路吹雪、山田五十鈴

山崎豊子の同名小説を映画化。大阪船場の足袋問屋の若旦那が、女性遍歴を重ね、放蕩の限りをつくしながら大阪商人としての気概を培っていく。「炎上」に続く現代劇で再び市川崑が演出。豪華女優陣との共演が見物。

64

破戒 (1962年/モノクロ/119分)ニュープリント上映

原作:島崎藤村 脚本:和田夏十 撮影:宮川一夫 美術:西岡善信
共演:藤村志保、長門裕之、三國連太郎、船越英二

三度市川崑監督と組み、島崎藤村の有名な原作を映画化。部落差別という重厚なテーマに挑み、激しく苦悩する青年教師を演じた雷蔵の熱演が光る。雷蔵の推薦によりお志保役に抜擢された藤村志保は、芸名も本作にちなんで名付けられた。

増村保造監督 時代が彼に追いつくのはいつの日のことだろう

65

好色一代男 (1961年/カラー/92分)ニュープリント上映

原作:井原西鶴 脚本:白坂依志夫 共演:若尾文子、中村玉緒、水谷良重(現 八重子)

雷蔵念願の企画でもあった西鶴ものを、時代劇初演出の増村監督の現代的な感覚によりスピーディな展開で描く。権力に反抗し、武士にたてつき、女を通じて人間の真実を求めた当代一の好色男・世之介を演じる雷蔵は必見。

66

陸軍中野学校 (1966年/モノクロ/96分)

脚本:星川清司 共演:小川真由美、加東大介

戦前。秘密諜報機関員(スパイ)を養成する中野学校を舞台に、時代の権力に蝕まれていく若者をサスペンスフルに描く。あらゆる連絡を絶ち、戸籍までも抹消されて訓練に励んだ一期生・三好次郎、コードネーム“椎名次郎”が初任務で失ったものは?

67

華岡青洲の妻 (1967年/モノクロ/99分)ニュープリント上映

原作:有吉佐和子 脚本:新藤兼人 美術:西岡善信 共演:若尾文子、高峰秀子

有吉佐和子のベストセラー小説を映画化。全身麻酔の方法を研究する医師を雷蔵が演じる。人体実験として自らを差し出す妻の若尾と母の高峰が、嫁姑を血気迫る熱演。雷蔵は本作と「ある殺し屋」でキネマ旬報主演男優賞を獲得した。

安田公義監督 演技者を愛し、特撮を愛でた挑戦の男

68

踊り子行状記 (1955年/モノクロ/89分/スタンダード)ニュープリント上映

原作:直木三十五 脚本:西条照太郎、犬塚稔 共演:山本富士子、勝新太郎

同じ1931年生まれの雷蔵・勝新太郎・山本富士子。後に大映を支える3人が顔を揃えた初めての作品。若い3人が織り成す恋と友情の物語、そして爽やかな作風は、眩いほどの青春映画の輝き。

69

女狐風呂 (1958年/モノクロ/87分)

脚本:小国英雄 美術:内藤昭 共演:瑳峨三智子

伊豆の温泉宿に新婚旅行で滞在中の夫婦が、次々に起こる事件解決に乗り出す。グランドホテル形式の推理時代劇で、豪華13人がいかにも怪しい行動を取って、興をそそる。共演は“鴛鴦コンビ”の瑳峨三智子。

70

眠狂四郎 円月斬り (1964年/カラー/85分)

原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 共演:浜田ゆう子、成田純一郎

安田公義監督と実に6年ぶりにタッグを組んだシリーズ第3作。11代将軍家斉の庶子が一般庶民を次々と斬り、そこに出食わした狂四郎もまた狙われることに。いよいよ非道さを増す狂四郎、向柳原橋での大殺陣が格別に印象深い。

71

眠狂四郎 魔性剣 (1965年/カラー/75分)

原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 共演:瑳峨三智子

久々の共演、シリーズ初参加となる瑳峨三智子を「狂四郎ガール」に迎える第6作。嵯峨演じる手裏剣の使い手との対決、シリーズに珍しく少年が登場して狂四郎と心通わすなど、本作も見所満載。

72

新鞍馬天狗 (1965年/カラー/78分)

原作:大佛次郎 脚本:相良準三、浅井昭三郎 共演:中村玉緒、藤巻潤

大正時代から幾度も映画化されてきた鞍馬天狗を、雷蔵を主演に新機軸で復活させた意欲作。討幕派を襲う新選組を敵に、鞍馬天狗の大活躍を描く。翌年「大魔神」を撮る安田監督の趣向が冴え渡る。

73

眠狂四郎 人肌蜘蛛 (1968年/カラー/81分)

原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 共演:緑魔子、三条魔子(江梨子)、川津祐介

シリーズ第11作。雷蔵の入院直前に撮影され、劇中狂四郎が死を覚悟するシーンが印象深い。緑魔子扮する猟奇的な悪女ぶり、業の深さを感じさせる出生のエピソード、傑出した後味を残すカルト的人気の高い一作。

74

博徒一代 血祭り不動 (1969年/カラー/90分)ニュープリント上映

脚本:高田宏治 共演:近衛十四郎

雷蔵159本目の作品。東映仁侠映画全盛期に、「若親分」の路線とは別立てのヤクザ映画として製作された。男臭い役柄ながら、雷蔵の仕草、台詞回しは最後まで美しく、端麗。言われなければ遺作には全く思えない、渾身の一作。

弘津三男監督 溝口健二の心と技を伝承する時代劇の雄

75

次男坊鴉 (1955年/モノクロ/75分/スタンダード)

原作:坂田隆一 脚本:八尋不二 撮影:宮川一夫 出演:瑳峨三智子

雷蔵単独主演第2作。旗本の次男で勘当を受けヤクザに身をやつしていた礼三は、やがて日光奉行の侍職に戻るが、恩義の一家の危機を知って、やくざ稼業に舞い戻る。初々しい雷蔵のお芝居が新鮮。

吉村公三郎監督 メロドラマは芸術へと昇華する

76

大阪物語 (1957年/モノクロ/96分/スタンダード)

原作:溝口健二 脚本:依田義賢 共演:中村鴈治郎、香川京子、勝新太郎、中村玉緒

井原西鶴の戯曲3本を溝口健二が原案としてまとめ、溝口急死により盟友・吉村監督が監督した。元禄の守銭奴を巡る毒を含んだ喜劇で、主演はコメディセンスの光る中村鴈治郎。雷蔵は可哀相なほど鴈治郎に振り回される役どころ。

衣笠貞之助監督 グランプリ監督が放つ、風格と伝統と美しさ

77

源氏物語 浮舟 (1957年/カラー/118分/スタンダード)ニュープリント上映

原作:北條秀司 脚本:八尋不二、衣笠貞之助 共演:長谷川一夫、山本富士子、乙羽信子

古典大著『源氏物語』後編「宇治十帖」の一編から材を取り、浮舟(山本)を主軸に描いた北條秀司の戯曲を映画化。純愛を貫こうとする薫の君(長谷川)に対し、雷蔵は浮気を重ね悲劇を招く匂宮を演じる。

78

かげろう絵図 (1959年/カラー/118分)

原作:松本清張 脚本:衣笠貞之助、犬塚稔 美術:西岡善信
共演:山本富士子、滝沢修、志村喬、木暮実千代

原作は松本清張の時代劇ミステリー。徳川12代将軍家慶の大奥での権謀を雷蔵演じる新之助が暴いていく。連載途上での映画化のため、すっきり完結とはいかないが、清張が描いた現代にも通ずる権力争いの醜さが印象深い。

79

歌行燈 (1960年/カラー/114分)ニュープリント上映

原作:泉鏡花 脚本:衣笠貞之助 脚本:相良準 共演:山本富士子

泉鏡花不朽の名作を、雷蔵、山本の共演に、名匠衣笠監督の演出で映画化。仇同士と知りながら相求め相寄る男女。雷蔵の悲哀と山本の慕情が、美しい明治情緒を背景に、切々と胸に染み入る純愛物語。

80

妖僧 (1963年/モノクロ/98分)ニュープリント上映

原作:八尋不二 脚本:衣笠貞之助、相良準 音楽:伊福部昭
共演:藤由紀子、城健三朗(若山富三郎)、万里昌代

奈良時代の怪僧・道鏡を主人公に、朝廷での純愛を描く文芸作。特撮が随所に入り、荒唐無稽な筋立てもあって、全体的にカルトな雰囲気。道鏡を正義の人と描き、雷蔵は気品と怪しさを同居させる難役。

木村惠吾監督 和製ミュージカル映画の巨匠

81

千姫 (1954年/カラー/95分/スタンダード)

脚本:八尋不二 共演:京マチ子、菅原謙二、大河内伝次郎

徳川家康の孫娘で、悲劇の人として知られる千姫の物語。グランプリ女優・京マチ子が千姫役。大映総天然色3作目の大作で、雷蔵は千姫最初の夫・豊臣秀頼を演じる。絢爛豪華なセットに映える雷蔵の美しさに注目。

82

初春狸御殿 (1959年/カラー/84分)

脚本:木村惠吾 音楽:吉田正 共演:若尾文子、勝新太郎、中村玉緒

新興キネマより引き継がれた人気和製ミュージカル“狸もの”の一作。御殿に迷い込んだカチカチ山の娘狸と御殿の若君狸を巡る、ファンタジックなラブロマンス。雷蔵の歌声はもちろん、勝新、若尾らが繰り広げるオールスター時代劇。

山本薩夫監督 戦後社会派の最高峰

83

忍びの者 (1962年/モノクロ/105分)

原作:村山知義 脚本:高岩肇 美術:内藤昭
共演:藤村志保、伊藤雄之助、城健三朗(若山富三郎)、岸田今日子

旧来の荒唐無稽な忍術使いという忍者のイメージを一新、動乱の戦国の世に活躍した諜報活動の専門集団として徹底的にリアルに描く。社会派・山本監督と人気絶頂の雷蔵のタッグで、忍者ブームを巻き起す大ヒットを記録。

84

続忍びの者 (1963年/モノクロ/93分)ニュープリント上映

原作:村山知義 脚本:高岩肇 美術:内藤昭
共演:藤村志保、坪内ミキ子、城健三朗(若山富三郎)、山村聡

大ヒットした前作の続編。引退の身であった石川五右衛門は、信長に子供を殺され復讐を決意。明智光秀の謀反を誘引し信長暗殺を企てる。社会派山本は、執拗に信長・秀吉・家康の権力闘争の醜さを描く。“歴女”必見。

井上梅次監督 邦画の力をアジアへと越境させた異才

85

女と三悪人 (1962年/カラー/102分)ニュープリント上映

脚本:井上梅次 共演:山本富士子、勝新太郎、中村玉緒、大木実

一人の美人女役者を巡り、流れ者、生臭坊主、素浪人の三悪人が繰り広げる恋のさやあて。モダンな演出が光る、江戸・時代劇版『天井桟敷の人々』。劇中劇で、雷蔵が十八番“弁天小僧”を演じるなどの趣向も凝らす娯楽作。

86

第三の影武者 (1963年/モノクロ/104分)ニュープリント上映

原作:南条範夫 脚本:星川清司 美術:西岡善信 共演:高千穂ひづる、万里昌代、天知茂

戦国期に立身出世を望む二宮は、三田谷城主池本の影武者として登用されるが、城主が目を失ったことから自分も目を潰され、影の生活に疑問を感じ始める・・・。影武者の視点で描く戦国時代劇。面白さは黒澤明「影武者」超え?

島耕二監督 スター俳優からスター監督へ・・・華麗なる転身

87

安珍と清姫 (1960年/カラー/85分)ニュープリント上映

脚本:小国英雄 美術:西岡善信 共演:若尾文子、浦路洋子

歌舞伎や能の演目としてもお馴染みの道成寺伝説にまつわる哀切甘美な悲恋時代劇。勝気な清姫に翻弄される安珍。安珍への遊び心がやがて激しい恋心に変わる清姫。二人の思いは交錯し・・・。雷蔵は「炎上」以来の坊主頭に。

渡辺邦男監督 200本以上の映画を生み出した早撮りの天才

88

蛇姫様 (1959年/カラー/96分)

原作:川口松太郎 脚本:渡辺邦男 共演:瑳峨三智子、近藤美恵子、中村玉緒

美男の旅役者・千太郎を演じる雷蔵。劇中劇で近松門左衛門の「生玉心中」や女装に扮しての「お軽勘平の道行」を魅せる。殺された父と妹の復讐劇であるが、歌に踊りに立ち回りにと、明朗快活な雷蔵の魅力が堪能できる。

89

二人の武蔵 (1960年/カラー/92分)ニュープリント上映

原作:五味康祐 脚本:渡辺邦男、吉田哲郎 共演:長谷川一夫、勝新太郎、本郷功次郎

武蔵は二人いた、という奇抜なアイディアと、チャンバラ活劇の連続に胸躍る一本。貫禄の“長谷川”武蔵に、意気揚々と決戦に臨む若き“雷蔵”武蔵。スター長谷川の後継者たる雷蔵の魅力がいよいよ開花。

90

長脇差忠臣蔵 (1962年/カラー/97分)

脚本:八尋不二、渡辺邦男 共演:勝新太郎、本郷功次郎、宇津井健、藤村志保

大映版「忠臣蔵」を撮った渡辺監督が、忠臣蔵をヤクザの世界に置き換えた本作も演出。雷蔵は大石内蔵助の役回り。時代背景を幕末に移し、清水の次郎長も登場。維新の幕開けをラストで表現するなど見応え十分。

加戸敏監督 雷蔵初期を支えた才能請負人

91

命を賭ける男 (1958年/カラー/102分)

脚本:八尋不二 共演:長谷川一夫、川口浩、山本富士子

江戸狂言で最も人気を博したと言われる、町奴と旗本奴の対決に権八・小紫の恋愛が絡む高名な物語。長谷川が町奴で、悪事を働く旗本に雷蔵。権八に川口、小紫に山本という豪華キャスト。雷蔵の敵役は珍しい。

92

濡れ髪剣法 (1958年/モノクロ/89分)ニュープリント上映

脚本:松村正温 共演:八千草薫、中村玉緒

雷蔵初期の当り役である若様(バカ殿?)大活躍の明朗時代劇。後に濡れ髪シリーズの第一作とされる。テンポ良い笑いとチャンバラのバランスも絶妙。八千草薫姫の可愛さにも惚れ惚れ。

井上昭監督 画面の隅々まで作りこむ職人監督

93

眠狂四郎 多情剣 (1966年/カラー/84分)

原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 共演:水谷良重(現 八重子)、中谷一郎

シリーズ第7作。新鋭・井上昭の手による優れたカット割や画面構成に息を呑む意欲作。「女妖剣」の菊姫が再登場し狂四郎に迫る。単純明快な物語に、女の情念や凝ったアクションを加え、充実した見応え。

94

陸軍中野学校 密命 (1967年/モノクロ/88分)ニュープリント上映

脚本:舟橋和郎 美術:西岡善信 共演:高田美和、野際陽子、加東大介、山形勲

シリーズ第4弾。謎の英国諜報組織“キャッツ・アイ”を追う椎名次郎。二転三転する展開をスピード感溢れる演出で描き、不穏でシリアスなハードボイルドの空気に痺れる。井上昭の才能を肌で感じさせる傑作。

95

陸軍中野学校 開戦前夜 (1968年/モノクロ/89分)ニュープリント上映

脚本:長谷川公之 共演:小山明子、浜田ゆう子、船越英二、加東大介

シリーズ第5弾。太平洋戦争直前の日米スパイ合戦を描く。シリーズの売りである、情報戦とアクションをふんだんに散りばめながら、日米開戦の裏側に迫る大胆な脚本。それを技巧たっぷりに描く演出の冴え!

黒田義之監督 理系脳を駆使する大映特撮の屋台骨

96

新鞍馬天狗 五條坂の決闘 (1965年/カラー/75分)ニュープリント上映

原作:大佛次郎 脚本:八尋不二 共演:万里昌代、山本学、芦屋雁之助

天狗と暗殺集団との戦いを描き、ラストのどんでん返しが印象深い。「大魔神」の特撮、「妖怪大戦争」の演出をした黒田監督唯一の雷蔵作品。前作と比べファミリー色を強めた特撮映画の位置づけ。

田坂勝彦監督 映画俳優、市川雷蔵の出発点

97

遊太郎巷談 (1959年/モノクロ/83分)

原作:柴田錬三郎 脚本:八尋不二 共演:浦路洋子、金田一敦子

高貴な身分であることを知らない浪人・遊太郎。ひょんなことから幕府転覆を狙うつう姫と関わり、その陰謀に立ち向かう。妖艶な悪女、出生の秘密、巻き込まれ型の物語と本作の原作者・柴田錬三郎の描いた眠狂四郎を連想させる。

瑞穂春海監督 心のひだを描き取るプログラム・ピクチャーの星

98

殺陣師段平 (1962年/カラー/86分)ニュープリント上映

原作:長谷川幸延 脚本:黒澤明 共演:中村鴈治郎、田中絹代、高田美和

黒澤の脚本を戦前から活躍するベテラン瑞穂が演出。新しい殺陣を求め、死の床までそれを伝道せんとする市川段平役に鴈治郎。雷蔵は、新国劇を設立し新しい演劇を目指す沢田正二郎役。鴈治郎と雷蔵の演技合戦は感動的。

渡辺実監督 撮影所を愛し、名監督に愛された才人

99

月姫系図 (1958年/カラー/74分/ヴィスタ)

原作:角田喜久雄 脚本:高岩肇 撮影:宮川一夫 美術:内藤昭 共演:浦路洋子

甲斐武田家の埋蔵金をめぐり、“風林火山”4枚のしおりの謎を追う冒険譚。雷蔵は腕の立つ美男剣士役で、剣戟が冴える。宮川一夫の流麗なキャメラと共に、多彩な人物と謎解きがテンポ良く進む。

土井茂監督 映画技術をTVドラマに持ち込み傑作を連発

100

おてもやん (1961年/モノクロ/70分)ニュープリント上映

脚本:高岩肇 美術:西岡善信 出演:三田村元、鶴見丈二

助監督から監督への昇格第一作にカメオ出演することで知られる雷蔵。本作も土井監督デビューご祝儀でワンシーンに登場。長らく上映の機会がなく出演の記録も絶えていたが、159番目の雷蔵作品として“発掘”上映する。